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Prologue
アタマの中で金属音みたいな音が鳴り響く。
それと一緒に激痛。アタマを締め付けられるみたいな痛み、全身の血が逆流するみたいな痛み。
ヤバイ。吐き気がする。吐くな。喉元を締め付けられてるみたいだ。
帰らなきゃ。でもこんな状態で帰れない。帰れるハズがない。
目の前に人影。黒いコート。
なんだ、オマエ。誰だよ。
視界が歪む。耳鳴り。
足に力がはいらない。
その人影が言葉を発する。なんだよ、ナニ言ってんだよ、オマエ。
なんでオマエ、オレのナマエ知ってるんだよ―――。
23XX年、東京。1世紀以上前に発生した戦争を最後に、「世界」と名のついた戦争はまだ一度も勃発していない。
しかし、その代償であるかのように、世界中を襲ったのは「天災」と呼ばれる類の災害と、大気汚染、地殻汚染による、人々のからだの異常であった。
生殖能力の減退に伴う出生率の低下にくわえ、先進国であっても先天異常による乳幼児の死亡率は50%を上回り、加えて人々の平均寿命は異常な低下を見せていた。たとえ生きていたとしても、五体満足であるものは少なく、人口は減少する一方。
政府がそれに対し対策をいくつか講じたものの、それは新たな問題をひきおこすばかりで―――だが、それでも人々はからだを寄せ合い、大地を踏みしめ、生きていた。
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