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 オレは黙って、もう一度ハルミを見た。そのきらめく瞳を見て、その髪を手でといていたら、えらく時化てはいるが、リセットしたい人生でもなかった気がしてくる。  汗まみれに駆け抜け、できた仲間の数だけ裏切りに遭い、結局今や手元の金はほとんど尽きてしまった。  仕事に打ち込んできたが、結婚もできず結局無職になって、暗い谷底に転がり落ちてしまったわけだが、違う人生を生きたいと願ったのはいつが最後だろう。 「実は、佐山さん、これまでに何度か、そんなふうに生き直しています。その直近の例にあげた二十歳の学生と三十歳の会社員です」 「やっぱ、そういうことか」  だから、この男はここにいるのである。 「佐山さんの人生のリセットについては、またお手伝いしますが、今より良くなるか悪くなるかは約束できません。現在五十代なので、これより長生きする人生に変わる可能性はそれなりにありますが、病気や事故のリスクもありますしね」 「きりがねえな」 「そういうことです」
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