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「聞かせてくれないか」  男は、どうぞ、と頷いた。 「これまでの佐山学は、なんで、そういう選択をしたのだ?」 「え、いや、歴代の佐山さんが変身願望やリセット願望を言ったことはありませんよ」 「どういう意味だ?」 「当人が願おうと願うまいと、私が、太陽系に時々現れる彗星みたく、数年に一度ここへやってくるのです。そしたら朝目覚めて活動を始めるまでに魔法をかけてしまいます」 「そこで、現実だったはずのことが、夢だったことになってしまうということだな」  男は、少し考えた。 「リセットして私がいない人生に変われば、そこで私と佐山さんの縁が切れることになります。そうしたら、その人生においては、私が現れることはありません」 「ということは……?」 「多分死ぬまでそのままです。逆に言えば、それまでは、また寄らせていただこうかと……」  つまり、このままでは、全然違う人生に入る時点で、ハルミと別れることになってしまう。
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