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「あの、ですね。もし、昨日までの記憶が全部嘘だったら、どうします?」 「どういう意味だ?」 「たとえば、申し上げにくいのですが、こちらの女性とは実は縁がなかったとか……」 「は? 何言ってんの、お前?」  オレは結果として、その胡散臭い男の話にいちいち付き合うこととなってしまった。 「これは、いわば魔術なんです。あなたがあなたであるかのように私が仕掛けていたとしたら……という話です」   ハルミが眉をしかめて、オレと男とを交互に見た。 「たとえば、佐山さんが今置かれている状況、つまり五十代無職ではない記憶に塗り替えることができるのです」 「意味が分からん」 「でしょうね」
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