私が姉妹を消した理由

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英語の勉強と並行してやっているのがピアノの練習。 私はショパンの曲が好き。 いつかは『革命のエチュード』を弾けるようになりたい! この曲は、ショパンが祖国ポーランドへの熱い想いを込めて作った曲で、この曲を聴いて感動しない人はいないのではないかと思うくらい、すさまじいエネルギーに満ちた曲だ。 こんなにも激しく、そして難易度の高い曲だけど、『革命のエチュード』はショパンが作ったたくさんのエチュードの中の一つ。 エチュードとは「練習曲」のこと。 練習曲と聞くと、なんだか単調でつまらない感じの曲のように思う人もいるかもしれないが、ショパンの練習曲(エチュード)は、練習曲を弾けるようになるための練習曲が必要、なんて思ってしまうくらいに難易度が高く、そして、曲自体の芸術性もとても高い。 有名なところでは、『別れの曲』もショパンのエチュードの一つ。 曲の冒頭のメロディーがたいへん美しく、癒される。 しかし、途中から曲調が大きく変化。 終盤にまた、冒頭と同じメロディーが出てきて、癒しモードになる。 なかなかにドラマティックな構成のエチュードだ。 ちなみに私は、冒頭と最後のところしか弾けなかったりする。 別れの曲や革命のエチュードを弾けるようになるには、これからもかなりの練習を積み重ねないといけない。 今までに何度も挫折しそうになった。 練習をサボってベッドで寝転んでいると、メグミが部屋に入ってきて、 「アイ~! ピアノの練習は? しなくていいの?」 と言ってくる。 メグミというのは、私の妹のことである。 「やるよ」 と私は返すが、そんな気がないことはメグミにはお見通しのようで、何度も練習を促してくる。 ちなみに、メグミはピアノが弾けない。 三姉妹で私だけがピアノを習っている。 私のピアノはアップライトピアノだ。 それでも、新品で買ったのでそれなりの値段がした。 三姉妹の中で、私にだけ高額なピアノが買い与えられ、習い事の月謝のことも考えると、親はかなりのお金を私に使っていることになる。 メグミには、私にだけ親の期待とお金が注ぎ込まれているように見えるのだろう。 「アイだけピアノ買ってもらってずるい! 買ってもらったんだから、ちゃんと練習しなよ!」 これがメグミの口癖になってしまった。 メグミの言うことは、もっともだ。 私はピアノを買ってもらえて習い事もさせてもらっているのだ。 親に感謝しないといけない。 そして、親の期待に応えないといけない。 分かってはいるけど、私も人間なので、練習をサボりたいと思うときも正直ある。 メグミは、そんな怠け心を見抜く能力に長けていた。 妹に言われて練習を再開するのも癪だけど、言っていることは正論なので、しぶしぶ私は練習に戻る。 こんな毎日だ。 一方、姉であるマナは、私のピアノについては何も言ってこない。 ピアノの練習をサボっている時でも、英語の勉強をサボっている時でも、 「やりたくない時にやっても効率悪いよね。ゆっくり休んだ方がいいよ」 と、言ってくれる。 それはそれでありがたい気もするけど、英語の勉強もピアノの練習も、やらないとやはり上達しない。 優しければいいということでもない。 私は、メグミからやれやれ言われるのも嫌だし、マナからやらなくてもいいよと言われるのも嫌だと思うようになった。
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