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次に、メグミと向かい合い、こう言った。
「メグミ、練習をさぼっているとき、ちゃんとやらないとダメだ! って叱ってくれてありがとう。私は弱い人間だから、メグミみたいに強く言ってくれる方がいいのかもしれない」
メグミは、まさか私から「ありがとう」と言われるとは思っていなかったようで、目をぱちくりさせて驚いている。
「じゃあ、なんで私と別れようとするの?」
「私、もっと強い人間になりたい。メグミに言われなくても、自分でピアノの練習に向かえるようになりたい」
メグミは、不服そうにほっぺたを膨らませ、こう言ってきた。
「アイにはピアノ、上手になって欲しいと思って、それで言っているんだよ。ショパンの曲、私は弾けないけど、アイならできるって思っている。それで応援しているんだよ!」
「うん。わかってる。そして、それは私も同じ。もっともっとショパンの曲が上手に弾けるようになりたいって思っている。なにより、私が一番そう思っている。だって、私の人生だし私のピアノだから」
メグミは、「私の人生だし私のピアノだから」の言葉に、私からの皮肉を感じ取ったようだった。
メグミが私を応援してくれているのは本当だと思うし、そして、私にだけ買い与えられたピアノに嫉妬しているのも、やはり本当だと思う。
メグミは何か言い返したそうだったけど、結局、何も言えずにいた。
しばらく沈黙が続いたが、メグミはどうやら私の気持ちを分かってくれたようだった。
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