No.1、転売って儲かるの?

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No.1、転売って儲かるの?

 お昼時。会社員は自前、もしくは相方が作った弁当を食べるか、もしくはコンビニで弁当を買う。食べに出かける会社員もいれば、社員食堂に行く人もいる。各自自由にお昼を満喫する。  新人社員の副井 業(ふくい かるま)は社員食堂でお昼を食べている。そこに先輩会社員、獏氏 須流(ばくし する)がやってきた。 「よう副井。お前、副業に詳しいらしいじゃねーか。」 「こんにちは先輩。僕はただ聞きかじっただけですよ。」 「いやいや、案外そういうやつのほうが詳しいって相場が決まっている。ちょっと副業について教えてほしいんだけど。」 「副業ですか?」 「そうなんだよ。俺らサラリーマンだろ?バイトよりは給与良いけどさぁ、もう少し欲しいんだよなぁ。」 「給与40万円、手取り35万円くらいの僕らは現代において良い方だと思いますけど?」 「そう言われると困るけどさぁ、やっぱり、手っ取り早くお金を得たいだろ?で、転売ってのを試したいんだけど、どうなの?」 「転売で儲けを出すのは無理ですよ。」 「・・・・・いや、そんな真顔で言わなくてもいいんじゃないか?少しくらい夢を見てもいいじゃねーか。」 「そう言って商材を購入した転売屋のほとんどが爆死してますよ?youtubeで「転売 爆死」って検索するといっぱい出てきますよ。めちゃくちゃ面白いです。」 「お前、意外と腹黒いな・・・。で、どこらへんが無理なんだ?」 「転売はマーケターの知識が必要なのです。」 「(・・・顔がバクマンの編集長みたいだ・・・)マーケター?」 「マーケターというのはオンラインゲームの用語で、「マーケットの相場を読む人」のことを言います。つまりは相場を読む力がいるのです。」 「相場?」 「商品というのは需要と供給によって値段が上下します。商品の希望小売価格は作っているところが決めますが、プレミアム価格というのはそういう相場で決まります。転売はその相場を読む力が必要なのです。少し前の転売は買い占めることで供給を一時的に0にすることで価格高騰を作っていました。ちょうどコロナ渦だったこともあって物流が滞り、それも相まって様々な商品が価格高騰したのです。当時は転売バブルでした。しかし、たった2年で崩壊しました。理由は各企業が転売対策を行ったり、転売される以上に商品を作ったのです。ポケモンカードが有名ですね。デュエルマスターズのラインをポケモンカードにすることで生産量を確保したそうです。」 「当時転売していた人はどうなったんだ?」 「追加で商品を購入して、価格が暴落して、ほとんどが死にました。」 「あぁ・・・供給が0じゃなくなったから価格も安定したのか。」 「そうです。ガンプラも供給が追い付き、転売価格が暴落しました。ちなみに転売していた人たちは一時的に雑所得などの税金の控除金額を超えたので、これから税務署が動くそうです。」 「え?税金取られるの?」 「はい、転売は違法ではないですが、定期的に販売を行う行為は商売に当たります。その判定は税務署とかそのへんが判定します。いくらメルカリで不用品を売ったと言い張っても、税務署とかが「商売」と判定すれば「商売」になります。あと、商売なので古物商許可証が必要になります。なければ普通に捕まります。」 「転売って大変だなぁ・・・。」 「さて、話を戻してマーケターの話をしましょう。」 「転売ヤー爆死事件概要でおなか一杯だよ・・・。」 「商品のプレミアム価格というのは需要と供給で上下します。なので、基本的に安い時に買って、高い時に売るのです。その差額が利益になるわけです。しかし、確実に値上がりするという商品は存在しません。」 「どういうこと?」 「会社の株やFXで取り引きする通貨でもそうなのですが、需要と供給があるということは相場が上下するのです。超大手の任天堂でさえ、株価は常に右肩上がりではなく、上下しているのです。その中には暴落暴騰のどちらもあるのです。」 「一般的な商品もそうなのか?」 「そうです。」 「君、ちょくちょく怖い顔になるね・・・。」 「例えばこちらのナンジャモSAR。」 「あ、知ってる。80万円とかしたカードだろ?」 「今、9万5千円です。」 「やっす!?」 「特価品なら5万円切りますし、傷物ならもっと下がります。」 「え?そんなに暴落してんの?」 「ちなみにナンジャモSRなら2万円です。ただナンジャモが好きなだけなら500円のアンコモンを買うといいでしょう。性能に違いはないですので重宝されます。あと、この手の話はTCGでは一般的です。」 「相当暴落しているなぁ・・・。やっぱり、プレミアム価格がつくのはレアものだけなのか?」 「そうでもないです。」 「そうなの・・・?」 「例えばこちらのドラゴンクエストカードゲーム。」 「え!?ドラクエってTCGあるの!?」 「ドラクエ7が発売したころのTCGです。当時はカードショップなんてなくて、おもちゃ屋さんやデパートで売ってました。知っている人なら喉から手が出るほど欲しい商品です。」 「へぇ。ドラクエって人気だから、欲しい人は多いんだろ?今いくらで売れるんだ?」 「0円です。」 「0・・・円・・・・・?」 「そもそも誰も知らないので需要が一切ありません。知っているのは当時子供だったアラフォーの連中だけです。ゲームとしても面白くなく、また遊ぼうという人は見たことがありません。」 「ひどい言われようだなぁ・・・。」 「確実に値上がりするものがない状態で商品を見極めるのは難しいのです。なので、転売で儲けを出すのはかなり難しいのです。」 「まとめたね・・・。」 「あと、利益というのは売上から経費を抜いた金額のことで、経費が高くつけば利益は少なくなります。そしてその利益を得るためにかかった時間を計算し、時給をたたき出します。転売屋の多くは時給500円だったそうです。」 「なんか、普通に働くほうがいいな・・・。」 「以上で僕の発表を終わります。おつかれまさでした。」 「ところで、やけに詳しいけど、どこで知ったの?」 「働かずにお金が欲しかったので調べました。」 「君も仕事辞めたいんだね・・・。」
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