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1.過去の話
「ほのか、行ってらっしゃい」
「うん」
お母さんは知らない。私が学校でひどいいじめを受けている事を。
私の家は貧しい。3歳の時に両親は離婚をし、お母さんとの2人暮らしが始まった。離婚の原因はお父さんの浮気だった。お父さんは単なる気の迷いだったと謝ったが、お母さんは許さなかった。
この出来事が、私の人生を狂わしていく。
「坂井さーん、臭いんだけど。」
「貧乏だからあんまりお風呂入れてないの?」
「玲子ちゃん言い過ぎだよ」
「かわいそうだよー」
うっさい。うっさい。かわいそうなんて微塵も思ってないくせに。次のターゲットになりたくないから必死にしがみついて気持ち悪い。無視していれば、平気なフリをしていれば、飽きてからいじめなんてしなくなると思っていた。でも、そんな事あるわけなかった。落書きや暴言だけのいじめはさらにエスカレートし、教科書を破られ、暴力行為は当たり前になった。もちろん、担任にいじめについて相談した。しかし、担任は私の味方などしてくれない。
「坂井さんが田中さんと関わるの控えたらどうかな…」
まるで、私が悪者みたいに。
田中玲子の母親はPTA会長で、高校に多大な寄付をしている。父親は有名な外科医。玲子自身もモデルとして活躍している。だから、貧乏な私より田中玲子を優遇するのは当たり前なんだ。お母さんがいじめられている事に気付いたのは三ヶ月後。手首の自傷行為について聞かれ、正直に話すと泣きながら謝ってきた。
「ごめんね、仕事を優先していじめに気づくことが出来なかった」
「大丈夫だよ、謝らないで」
しかし、ずっと続くいじめに耐えられるはずもなく、鬱病になってしまう。
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