ある雪の日の受験生

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「なあ、雪ってどうして白いんだろうな」 「なんだ、いきなり。雪降って、寒さで頭おかしくなったのか」 「ちげーよ。ただ単にこの自分が生きている世界に疑問を持ち始めただけさ」 「なぜ人は生まれてきて死ぬのかを考える思春期中学生か。俺らもう高校3年で、受験受かったら大学生だぜ。法律上ではもう大人だ」 「知ってるか。男はいつも心の中に少年の心を持っているんだぜ」 「どうした、ぼくぅ?迷子かなぁ、人生の」 「わかった。今すぐお前の人生を終わらせてやる」 「殴ろうとすんじゃねえ」 「ふんっ」 「ったく、品性が終わってやがる。で?なんでいきなりそんなこと言い出したわけ?雪が白いことなんて当たり前のことだろ?何を今更」 「いや。ふと思い浮かんだだけだよ。今俺ら大学受験直前じゃん?で大学入って卒業したら就職だろ?この先もう心に余裕を持って生きていくことはなくなるんだろうなって。それで思い返してみると、社会のしがらみを考えず、ただただ遊ぶって事をしてこなかったと気づいてさ。そう考えると、いつも遊んで、雪降っただけで大はしゃぎしていた小学生の頃って良かったんだなあと、はかなく降る雪を見て思った訳よ」 「雪の色が白色なことと関係ねーじゃん」 「うるせえよ」 「お前の頭がパッパラパーで真っ白だっただけなんじゃね?受験の知識抜けてないといいな」 「ハッ。受験直前期の頭ん中に余白なんてねえわ」 「まあ、とりあえずは受験だな。それが無事終わったら小学生みたいにお前のお望み通り雪合戦でもしようぜ」 「望んでねえよ。まあ、受験が終わったら久々にやるのもありか」 「顔面ぶつけて泣かせてやるよ」 「雪合戦で泣くって、それこそ小学生だな」 「お前が合格発表の時期に合格してみっともなく泣かないように涙を枯らしてといてやるよ。俺って優しいだろ」 「最後の一言無けりゃ感涙してたかもしれないのになあ」 「もし涙枯らせなくても乾杯の日までは取っておけよ」 「うまくねえよ」
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