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顔を何かがなでる感触。
それは2本の何かで。ああ、きっとこれは両手だ。
ちょこちょこ触れるそれがこしょばい。
いや、おかしい。おかしいでしょ。
あの雪の日から1か月も経った。
1か月だ。
雪は解けもう春の兆しが見える。
1か月も経ったのに相変わらずあの子は私のところに来てくれる。
というか、来る。
たしか49日は成仏をしないって聞いたからあの子がなくなってから49日目まで数えていた。
49日目に関してはわざわざチュールを買って枕元に置いておいた。
でも、50日目も来た。
し、今日はあの子がなくなって61日目だ。
雪についた足跡を何回も見直したあの日が遠い。
そもそも、そもそもだ。
あの子はこんなケナゲな子じゃない。
人の顔にお尻しか向けないし、撫でたら手をはたいてすぐに毛づくろいをする。
鳴くのもエサを求めるときだけだし、大体私を見る目がかなりふてぶてしい。
全部前足で人間を動かすそのわがままさ。
私が最初につけた名前はチェリーだったが、そんな小さくてかわいらしくもなく、そのうちお嬢というふさわしい名前に変わっていった。
そんなこの子がなんだかんだかわいくてしかたなかったし、自ら進んで奴隷をしていた。
だから、おかしいのだ。
こんなに毎日1か月も私に、しかもお尻を向けずに2本の前足で触ってくれるなんて。
というか、そもそも幽霊に足跡ってあるのだろうか…。
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