モノローグ

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

モノローグ

「ねえ、おとうさん!またおかあさんに会いに行きたい!今度はいつ行けるの?」 幼い頃の記憶。 「そうだよな、会いたいよな。…ごめんな。お母さんには、もう会えないんだ。お父さんのせいなんだ。」 父は私をそっと抱きしめた。 「ごめんな、ごめんな。」 謝罪の言葉が続く。 「…わたしが、産まれちゃったせい?」 「ひ、向日葉(ひなは)!なんてことを!そんなわけないだろう?向日葉はお父さんの大切な娘だよ。」 「でも、おかあさんにとって、じゃまだったみたいだよ。ひな、読んだの。おかあさんの日記。」 父は苦しそうな、悲しそうな顔をする。 「なんて、かいてあったんだい…?」 「あのね、『ひなはがうまれたせいで、すべてがムチャクチャになった。』って。あとは、かんじばっかりで読めなかったんだ。」 「そうか、そうか…。でもな、向日葉。お父さんは誰よりも向日葉を1番に愛してるから。それだけは絶対だからな。」 父は、泣いているように見えた。 「ひなも、おとうさんが1ばん好きだよ!」 ガチャ。 黒い服を着た、知らない人が入ってくる。 「田城さん、そろそろ。」 「ああ、すみません。向日葉、行こうか。」 父の手を取り、部屋を出る。 少し進んだ先にある大きいドアを開ける。 泣き声がたくさん聞こえるその部屋の中に、花で囲まれた黒い棺があった。 『小川(おがわ) (ゆい)』 私と父はその前に立ち、手を合わせる。 「おかあさん、このなかに入っちゃって、でてこないんだね。」 「うん。そうだよ。だからもう会えなくなっちゃったんだ。」 「おかあさん、さびしくないかな。」 「きっと、大丈夫だよ。」 棺に花を入れ、そばの空いている席に座る。 「そういえば、おかあさんの日記でもう1こ読めたやつがあったの。いみがよく分からなかったこと。」 「…なんだい?」 「えっとね、ひらがなで、『ころしてやった』って。」
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!