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モノローグ
「ねえ、おとうさん!またおかあさんに会いに行きたい!今度はいつ行けるの?」
幼い頃の記憶。
「そうだよな、会いたいよな。…ごめんな。お母さんには、もう会えないんだ。お父さんのせいなんだ。」
父は私をそっと抱きしめた。
「ごめんな、ごめんな。」
謝罪の言葉が続く。
「…わたしが、産まれちゃったせい?」
「ひ、向日葉!なんてことを!そんなわけないだろう?向日葉はお父さんの大切な娘だよ。」
「でも、おかあさんにとって、じゃまだったみたいだよ。ひな、読んだの。おかあさんの日記。」
父は苦しそうな、悲しそうな顔をする。
「なんて、かいてあったんだい…?」
「あのね、『ひなはがうまれたせいで、すべてがムチャクチャになった。』って。あとは、かんじばっかりで読めなかったんだ。」
「そうか、そうか…。でもな、向日葉。お父さんは誰よりも向日葉を1番に愛してるから。それだけは絶対だからな。」
父は、泣いているように見えた。
「ひなも、おとうさんが1ばん好きだよ!」
ガチャ。
黒い服を着た、知らない人が入ってくる。
「田城さん、そろそろ。」
「ああ、すみません。向日葉、行こうか。」
父の手を取り、部屋を出る。
少し進んだ先にある大きいドアを開ける。
泣き声がたくさん聞こえるその部屋の中に、花で囲まれた黒い棺があった。
『小川 唯』
私と父はその前に立ち、手を合わせる。
「おかあさん、このなかに入っちゃって、でてこないんだね。」
「うん。そうだよ。だからもう会えなくなっちゃったんだ。」
「おかあさん、さびしくないかな。」
「きっと、大丈夫だよ。」
棺に花を入れ、そばの空いている席に座る。
「そういえば、おかあさんの日記でもう1こ読めたやつがあったの。いみがよく分からなかったこと。」
「…なんだい?」
「えっとね、ひらがなで、『ころしてやった』って。」
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