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「俺も、う……った」
「え?佐倉、なんて言った?」
「俺も、俺も嬉しかった!!」
真っ赤な顔をあげて佐倉が言う。
「俺も宮浦からマカロン貰って嬉しかった。会社で誰にもあげてないって、俺だけだって知って、ちょっとだけ、俺は特別なのかなって思って、嬉しかった」
「佐倉は俺の特別だよ」
「えっと、あのちょっと待って」
「あ、ごめん」
「いや、違くて、その、宮浦は悪くない、ごめん。こんな展開になると思わなくて動揺してる。俺ね、宮浦が今年のバレンタインも会社でチョコたくさん貰うのかもとか、告白されるのかもとか、そんなところ目の前で見たくなくて、それで会社休んで。俺も宮浦に素直な気持ち伝えられたならよかったのにって考えてたんだ。」
そう言って佐倉は俯くも、すぐに顔をあげて一瞬だけ目線を合わせてからまた話し出す。
「昨日の昼、俺が休むの残念だって言ってくれたでしょ?明日から宮浦は出張だし。資料はデータで送ろうと思ってたんだけど、まあ、それを口実に差し入れ?として渡すくらいならいいかなと思って。手作りは流石に重いかなとは思ったけど宮浦鈍感だし…もし、俺の気持ちに勘付かれても、暫く会えないし気まずくないかなと思ってそれ作ったんだ」
「そっか」
佐倉からみて俺って鈍感なんだと思いつつ、次から次へと紡がれる嬉しい言葉に胸の鼓動が強くなっていく。
うんうん、と佐倉は自分に言い聞かせるように頷き、次は目を逸らさずに言葉を続ける。
「ん、でね、だから、その、俺も宮浦が好きなんだ」
その言葉を聞いて、我慢なんてできなかった。
たった今、想いが通じた目の前の愛しい人を抱きしめる。
「佐倉が好き、好きだ。俺を好きになってくれてありがとう」
その言葉を伝えると、ゆっくりと俺の背中に佐倉の腕がまわされた。
「宮浦こそ、こんな俺を好きになってくれてありがとう」
時間としては1分もなかったかもしれない。
遠くで誰かの話し声が聞こえるまで、佐倉の存在を確かめるように暫くそのまま抱き合った。
「ごめん、明日から出張なのに、もう0時になりそうだ」
「佐倉に会えずに出張なんて行けないよ、会えて気持ち伝えられてよかった」
折角想いが通じたと言うのに、明日から会えないなんて。少し暗い表情をする佐倉も同じように思ってくれてるのかな。
「出張から帰ってきたら、まっすぐここに来てもいい?」
「え、でも疲れてるんじゃ」
「佐倉に会いたい」
「俺も…宮浦に会いたい」
「じゃあ、明々後日。またくる。それまではメールするから。あとチョコレート本当にありがとう。大事に食べるよ」
「ん、気をつけていってらっしゃい」
「じゃあ、おやすみ」
部屋に戻り、窓から手を振る佐倉に俺も手を振り返す。
見上げた夜空は俺達を祝福するかのように満天の星が輝いていた。
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