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第1話ー紙袋と演劇と
はい。私は氷の使い手(白岩小雪(14))です。
正確には雪女の子孫です。もちろん誰にも、友達にも、このことは内緒です。だから人前で雪女の能力を使ってはならない、と、きつく言われております。
とはいえ、目の前で同じ学校の人がチンピラさんに襲われていたら流石に助けてしまいますよね、うん。少し悩みましたが、人として、ね。
いやあ、スクールバッグの中に運よく紙袋があって良かったです。顔をうまく隠すことができました。これできっと助けた方にもバレてないですよね〜。
ちなみに、雪女といえども、人を襲うなんて恐ろしいことは致しません。見た目も普通です。少し色が白いくらいです。普通の中学に通い、楽しく暮らしております。今もクラスメイトと一緒にお昼を食べています。
「ゆっきー、今日も美味しそうなもの食べてるねー!」
「このアイスね、期間限定の味なんです!購買に売っててラッキーだったんです!」
本能的に身体が冷たいものを欲するのか、大好物はアイスです。本日はチューチュー吸うパックタイプのシャーベット状のアイスを食べています。
のんびりといつも通りのお昼を過ごしておりますと、
「すみません、白岩小雪さんはいらっしゃいますか?」
と、教室前方から私を呼ぶ声が聞こえてきました。
……うん、どこかで聞いたことのある声ですね。おそるおそる声のする方を見てみました。
や、やはり。
昨日助けた方です。
「ひ、平野生徒会長……!?白岩さんなら、あっちに……。」
近くの席の男子が丁寧に私の方を指さしてくれました。
というか昨日助けた方は生徒会長だったのですねー。そういえば時折、式典で挨拶をしていたような……?いやあ、人の顔を覚えるのはニガテです。
「ありがとう。先生から伝言を預かっていて。ちょっといいかな?」
アイスを味わう予定なので後にしてください……などと言う勇気はもちろん持ち合わせておりません。
「はい、わかりました。」
「ありがとう……あ、カバンも一緒に持ってきて。」
「……はい。」
少し嫌な予感がしつつも、私は会長の後をついていきました。あーあ、せっかくアイスを食べていたのに。蓋ができるタイプのアイスだったのが不幸中の幸いです。保冷剤と保冷バッグを持ち歩いているので、まあ、放課後までアイスを持たせることもできるでしょう。
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