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「いや、君がつけているシュシュが昨日発売のMaymayの付録だから分かっただけだよ。」
「ああ、なるほど……。」
良かった、それだけなんですね。心を読まれたのかと思ってびっくりしました。
「ですが、それでどうして上川町にいたということに……?」
「それは、上川町の特性から推理できるんだよ。」
会長は得意げに続けます。
「昨日、俺が助けられた辺りには駅はない。学校からも離れていて、寄り道するような町でもない。
だからあの辺りでうちの学生が歩いていたとすると、上川町に住んでいるか、あの辺りで何か用事があったかのどちらかだ。
だとすると学習塾か本屋くらいだが、学習塾では授業中の時間だ。」
「なるほど。ですが学校の駅近にも本屋はありますよね?」
「そう、そこが味噌なのだよ。なぜ紙袋の少女はわざわざ遠い本屋に行ったのか?
それは、駅近の本屋では売り切れていたのではないか?」
「……。」
会長の推理は続きます。まさに立板に水。私は彼の言葉を黙って聞いているほかありませんでした。
「そこで昨日発売日のものを調べてみた。すると、昨日はMaymayの発売日であった。しかも付録は「べんとーず」のシュシュ。普段はMaymayを買わない層や転売ヤーまで購入したため、売り切れ続出したとSNSは阿鼻叫喚だった。学校の駅近の本屋は利用客も多いから売り切れていてもおかしくはない。」
「それで、紙袋さんは上川町にいた、と。……まあ、私は、運よく、近所のコンビニで買えたんですけどねー。」
確かに会長の推理は素晴らしいです、が、それでは紙袋さん=私、の証拠にはならないはずですよね。
「いや、上川町で買っただろう……君、家庭科の宿題の家計簿ファイルを見せてくれないかい?」
「!?」
ぎくっ!とさせられました。なるほど、その手がありましたか。
「この時期、君たちは家庭科の宿題で家計簿を付けさせられているはずだ。その時にレシートのファイリングも提出させられる。……君は今日の抜き打ち持ち物チェックでも何も引っ掛からなかったくらいだから、ファイリングも真面目にやっているんじゃないかい?きっとそこには、上川町の書店のレシートがあるだろう……。見せてくれないかい?」
ここまで言うと、さあ、と、会長は私の方に手を伸ばしてきました。
見事な推理です。会長の読み通り、私のカバンにはレシートファイルが入っていて、そこに本屋のレシートもあります。
どうしましょう。
あ。念の為、氷を使っているところはあまり見せないようにしてお助けしましたし、雪女の能力までは気がついていない、はず!
まだしらばっくれ続けられるのではないでしょうか?
……と思っていましたが、
「君なんだろう?俺を助けてくれた、氷の使い手は。」
氷の能力も気が付かれていましたかー。万事きゅうすです。
こうなったら、
「ふっふっふっ……そうです、私が氷の使い手です!これを知られたからには生きては返せませんね。」
「何っ!?やはりそうだったか!」
「あなたを教室ごと氷漬けにして差し上げます!」
こう叫ぶと、部屋の気温が一気に下がり、会長はたちまち凍った人形へと姿を変えました。
……と、したいところですが、そのような勇気はあいにく持ち合わせておりません。どうしましょう……。
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