第1話ー紙袋と演劇と

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 キーンコーンカーンコーン。  早いもので今日の授業は終わりです。6限目の現国、眠かったです。科目自体は嫌いじゃないんですけど、体育のあとの6限目だと、穏やかな眠気が来ますね。  体育のときは、クラスの皆様から「会長に呼び出されてたけどどうしたの!?」聞かれてたいへんでした。まおが咄嗟に「部活の相談だったんだよね〜?」と言ってくれたおかげで助かりました。なんだか疲れました。嘘をつくのはニガテです。  あ、そういえば結局、お昼の残りのアイスを食べるのを忘れていました。カバンからアイスを取り出してみると、流石にグニョグニョの液状になっていました。うーん、残念。 そこで、私はこっそりと雪女の能力を使って、手から冷気を出し、アイスを固め直しました。  いやあ、雪女で良かった〜って、思う瞬間ランキング、ベスト3に入りますね。少し風味は劣ってしまいますが、これでやっとアイスを食べられます。  私がしみじみ考えながら、アイスを味わおうとすると、 「あ、白岩さん、平野くんから聞いたと思うけど、演劇部の代役の件、どうかな?」  と、現国の相川先生に話しかけられてしまいました。  平野くん……ああ、会長のことですか。演劇部の代理ってなんのことでしょう……? 私がぽかんとしていると、 「あれ、聞いてないかな?私が顧問をしている演劇部でコロナが流行っちゃって、ピンチヒッターを用意したいって白岩くんに相談したら、白岩さんを推薦したいのでお昼休みに話しておきますって言ってたんだけど……。」  ああー。先生からの頼み事ってこれのことだったんですねー。たまたまですが本当に部活の用事だったとは。  まあ、忙しいとか理由をつけて断りましょうか。 「ええっ!ゆっきー、会長から直々に推薦されたの?」 「すごいじゃん、あの会長から!?」  近くの席の子たちが口々に囃し立てます。会長、そんなにすごい方なんですか!? 「いいなーやりなよやりなよ。」 「そうだよ〜ゆっきーのスキー部、今オフシーズンでしょ?」 「うん、先生も、白岩さんの朗読うまいと思ってたから是非やってほしいな!」  あちゃー。これは断れない流れですね……。 「はい、やります……。」 「まあ、良かった!それじゃあ、聞いてると思うけど、早速明日の放課後、部活に来てもらいたいんだ!」  ああ、どうしてこんなことに……。
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