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そして次の日の放課後。
「……で、どうして猫田さんまでいるのかな?」
会長が引き攣った笑顔をしながら聞いてきました。演劇部の練習にまおも付いてきたのです。
「良いじゃ〜ん。欠員が多いんでしょ?大道具作りとか大変なんじゃにゃいの?」
まおはニヤニヤしながら会長を眺めています。
「確かにそうだな……まあ、邪魔はしないでくれよ。」
会長は笑顔ですが、よく見ると目はあまり笑ってません。
ああ、何だか険悪な雰囲気です……。
「それじゃあ白岩さん、早速だけど、このシーン、台本見ながらやってみてくれないかな?」
先生が笑顔でお願いしてきました。そういえばどんな役なのでしょう。
「平野くんから聞いてると思うけど、アクションが多い役だから、セリフ自体は少なくて、身体の動きを覚える方が大変だと思う!」
……アクション?
「うん、俺を助けてくれた君ならできると思ってね。」
なるほど。私の動きを見て、確証をつかもう、という魂胆ですか。うーん、流石です。さてどうしましょうか……。
私が悩んでいると、
「アクション?それならボクの方が得意だよ!」
と、横からまおが叫び、私の持っていた台本を引ったくりました。
「ふむふむ……ここをやれば良いのかな?」
ちらっと見ると、パタンと台本を閉じ、
「……ふっふっふっ。ここで会ったが百年目!さあ、やってしまおう!」
と、急に演技を始めてしまいました。
そして「やあっ!」「とうっ!」と叫びながら、綺麗にシャドーキックを決めたり、バク転したり、バク宙したりと、まるで重力がないかのようにそこら中を飛び回りました。その姿の美しいこと!猫のようにしなやかな動きです。幼馴染ながら惚れ惚れとしてしまいます。
「きゃー!素敵!」
他の演劇部員の皆さんも目がハートになっています。
「すごいわ!猫田さん、本当に演劇部員にならない!?」
先生も鼻息を荒くしています。
「うーん、どうしようかにゃー。」
まおも満更ではなさそうです。
「……猫田さん、すごいな。……君も、本気を出せばこのくらいできるんじゃないのかい?」
会長が苦笑いしながら聞いてきました。
「いやあ、私はこんな動きはできませんよ……。」
私は笑顔で答えました。
実際、できないんですよね。私が戦えていたのも、雪女の力で氷の足場を作ったり、足の裏から冷気を出していたりしていたおかげなので。それを封じられてしまうと難しいですね。
と、考えている間にも、まおは壁を走ったり、逆立ちしたりと、ものすごい動きを繰り広げています。
「まあ、そうか……。」
あまりのアクロバティックな動きに会長も苦笑いです。
「せっかく来たので何かお手伝いさせてください。大道具とか小道具とか、人手が足りてないところありませんか?」
私が端で作業をしている方に声をかけると、
「あ、じゃあ、こっちお願い!」
と、大道具の方に声をかけられました。
説明を受けて、見よう見まねで手を動かしていると、
「俺も手伝うよ。」
と、会長もやって来ました。
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