第1話ー紙袋と演劇と

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 そして次の日の放課後。 「……で、どうして猫田さんまでいるのかな?」  会長が引き攣った笑顔をしながら聞いてきました。演劇部の練習にまおも付いてきたのです。 「良いじゃ〜ん。欠員が多いんでしょ?大道具作りとか大変なんじゃにゃいの?」  まおはニヤニヤしながら会長を眺めています。 「確かにそうだな……まあ、邪魔はしないでくれよ。」  会長は笑顔ですが、よく見ると目はあまり笑ってません。  ああ、何だか険悪な雰囲気です……。 「それじゃあ白岩さん、早速だけど、このシーン、台本見ながらやってみてくれないかな?」  先生が笑顔でお願いしてきました。そういえばどんな役なのでしょう。 「平野くんから聞いてると思うけど、アクションが多い役だから、セリフ自体は少なくて、身体の動きを覚える方が大変だと思う!」  ……アクション? 「うん、俺を助けてくれた君ならできると思ってね。」  なるほど。私の動きを見て、確証をつかもう、という魂胆ですか。うーん、流石です。さてどうしましょうか……。  私が悩んでいると、 「アクション?それならボクの方が得意だよ!」  と、横からまおが叫び、私の持っていた台本を引ったくりました。 「ふむふむ……ここをやれば良いのかな?」  ちらっと見ると、パタンと台本を閉じ、 「……ふっふっふっ。ここで会ったが百年目!さあ、やってしまおう!」  と、急に演技を始めてしまいました。  そして「やあっ!」「とうっ!」と叫びながら、綺麗にシャドーキックを決めたり、バク転したり、バク宙したりと、まるで重力がないかのようにそこら中を飛び回りました。その姿の美しいこと!猫のようにしなやかな動きです。幼馴染ながら惚れ惚れとしてしまいます。 「きゃー!素敵!」  他の演劇部員の皆さんも目がハートになっています。 「すごいわ!猫田さん、本当に演劇部員にならない!?」  先生も鼻息を荒くしています。 「うーん、どうしようかにゃー。」  まおも満更ではなさそうです。 「……猫田さん、すごいな。……君も、本気を出せばこのくらいできるんじゃないのかい?」  会長が苦笑いしながら聞いてきました。 「いやあ、私はこんな動きはできませんよ……。」  私は笑顔で答えました。  実際、できないんですよね。私が戦えていたのも、雪女の力で氷の足場を作ったり、足の裏から冷気を出していたりしていたおかげなので。それを封じられてしまうと難しいですね。  と、考えている間にも、まおは壁を走ったり、逆立ちしたりと、ものすごい動きを繰り広げています。 「まあ、そうか……。」  あまりのアクロバティックな動きに会長も苦笑いです。 「せっかく来たので何かお手伝いさせてください。大道具とか小道具とか、人手が足りてないところありませんか?」  私が端で作業をしている方に声をかけると、 「あ、じゃあ、こっちお願い!」  と、大道具の方に声をかけられました。  説明を受けて、見よう見まねで手を動かしていると、 「俺も手伝うよ。」  と、会長もやって来ました。
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