0人が本棚に入れています
本棚に追加
会長さんと2人で黙々と作業をするという若干気まずい時間が流れます。よく考えたら、会長さんときちんと会話をしたことってあまりなかったですね。
「……そういえば、会長って、演劇部だったんですか?」
沈黙に耐えきれなくなって質問しました。
「いや、俺は、今は生徒会以外はどこの部活にも入っていないんだ。ただ、自分で言うのも何だが、どの運動部も文化部もそつなくこなすから、こうしてよくピンチヒッターをつとめるんだ。」
何と。そんな人が実在するとは……!それでいて爽やかに嫌味を感じさせないのが、またすごいですね。
「漫画のヒーローみたいですね。才能に溢れてて羨ましいです。」
「いやいや、君みたいに紙袋を被ってチンピラを撃退した方が漫画のヒーローっぽいと思うぞ!?」
「だから、それは私ではありませんよー。」
会長と会話をしていると、後ろから、「あっはっはっ!」と、豪快な笑い声が聞こえて来ました。
振り返ると、大柄な男性が笑っているところでした。
「いやあ、今回の助っ人は頼もしいなあ!」
私がキョトンとしていると、
「すまない、自己紹介がまだだったね。私は演劇部の部長の西川だ。以後、お見知りおきを!」
なるほど、演劇部部長さんですか。どうりで何となく芝居がかった感じの話し方なのですね。
「アクションを少なめの台本に変えて私が代役を務めようかという話も出たのだが、いやあ、こんなに動ける人が来てくれるとは!良かった良かった!
おまけに平野くんまで来てくれるとなると、次の舞台の客入りも安定だな!」
どうやら会長とは元からお知り合いのようですね。
そして私の方を見て、
「君も会長の紹介でヘルプで来てくれたのかな?」
と聞いてきました。
「初めまして!2年の白岩小雪と申します!よろしくお願いします!」
と、部長さんの勢いに釣られて私も大声で自己紹介をしてしまいました。すると、
「白岩さん、君もありがとう!自分から動いて大道具を手伝ってくれるなんて、素敵な心がけだね。本当に助かったよ。」
と、がしっと私の手を掴みながらお礼を言ってくださいました。
なんと熱いお方なのでしょう。少し手伝っているだけでこんなに感動してくださるだなんて!
「それじゃあ、シーン20から25まで練習してみよう!それが終わったら休憩だ!カヌレを焼いてきたぞ!」
おおおー!と、部員からの雄叫びが聞こえて来ました。
近くにいた部員の方が、
「部長の作るお菓子、すっごく美味しくて、部員に大人気なんだよ〜。」
とこそっと耳打ちしてくださいました。
お菓子作りも上手だとは。見た目はラーメン屋さんみたいに熱血という感じなのに。
それにしても、部長さんはすごく慕われていらっしゃるみたいですね。
最初のコメントを投稿しよう!