四章 葛藤

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四章 葛藤

 コウキは店内で煙管を燻らせつつ、店内を見回した。  今日は店を開けていない。  から召集がかかったからだ。  「あの方も、何を考えているのやら…」  その時、こちら側の扉が開いて入ってきたのはユキだった。    「コウキ。連絡してもらって助かったよ。ありがとう」  「いや、礼なら彼女に言ってくれ」    コウキはユキにコーヒーを出すと、再び煙管に葉を詰めて燐寸(まっち)火をつけ、煙を燻らせる。  「……良い娘じゃないか。瑠璃子」  「…………解っている。だが…」  「近くなりすぎるのも、怖い…か」  コウキの事を知り、距離が近づくという事は、との距離も自然と近くなってしまう。  人である瑠璃子にとってそれだけ危険が増す、という事だ。  それは、人の子を育てているユキにも、同じ事が言える。    「お互い、難儀だねぇ……」  「……そうだな…」  向こう側の扉が開き、ゴウキが現れる。    「おう。しかし、何の召集なんだろうな?」  全員が首を捻ったその時。  ユキとコウキの二人がハッと顔を上げた。  太陽と瑠璃子につけていた「守り」が砕けた気配がしたのだ。  更に、店内に一つの鬼火が入ってきて、店内の壁にぶつかり、炎の文字が浮かび上がる。  『子供と女は預かった。中央公園で待つ。風鬼雷鬼』  「…良い度胸していますねぇ」  「……ゴウキ」  「はいよ。なかなか面白そうな催しものだが、門番だろ?」  ゴウキが請け合おうとしたその時、   「緊急事態みたいだね」  妙に明るい声が響く。  「「「!!」」」  コウキ達は、声がした方を振り返ると、そこには…  「門番は特別に私が引き受けてあげよう。皆んなで行っておいで」  黒髪黒瞳の麗人が立っていた…。  
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