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六章 絆
数日後、黄昏の店内。
お気に入りの黒糖ほうじ茶ラテを淹れてもらった瑠璃子だが、気分は晴れなかった。
「記憶を消してしまうなんて…」
「………」
あの日ユキは自分に関する記憶をコウキに頼んで消してしまったのだ。太陽の前から消えるつもりで。
記憶を消された太陽は、今、児童養護施設にあずけられている。
「ユキさんは、どうしているんですか?」
「……ユキは、元々山奥にある門の門番をしていたんです。今は仲間に頼んでいたのですが…。今はそこに」
「ユキさんは、どうして、記憶を消すように頼んだんでしょうか…」
「……それには、なぜ、ユキがあの子を育てていたのか…そこから話さなければなりませんね…」
ユキは元々、山奥にあった門を守っていた。場所柄、雪を操れる能力を買われての事だったらしい。
管理する山は、人が入ると夏でもなぜか猛吹雪に遭う…祟られるという噂があって、あまり人は近づかない。
もちろん、そう仕向けている訳だが、それを利用して、良くない事をしに入ってくる人間はいるものだ。
ある夕暮れ時、雪が降る中一人の女が穴を掘っていた、その横には、眠っている子供が一人。ある程度の大きさに彫った穴に女はあろうことか、子供を荷物か何かのように放り込んで埋めようとしたのだ。
ユキが見かねて助けた子供は、アザや細かい傷が沢山あった…。
女は、現れたユキに驚き、逃げ出し、そして……雪で足を滑らせ、崖下へ転落、頭を打ち…即死の状態だったらしい。
「…ユキは、自分があの子の母親を殺してしまった…と思っているんですよ」
「………」
その罪悪感と、胸に抱いた、小さな命…。
ユキはその時、自分が育てようと決心したのだ。
だが…人と鬼である事、そして母親の事…。常にユキは不安を抱えてきたのだろう。
「先日の件で…自分の姿が、あの時の記憶を呼び起こしてしまった…そして、またこのような危険な目に合わせてしまうかもしれない…ユキはそう思ったんです」
「……それで…」
二人の間に、沈黙が降りる…。
「………コウキさん。私の記憶も、消せる…って事ですか…?」
「………」
その時、コウキが、はっと顔を上げた。
「コウキ……さん?」
「………瑠璃子さん。お願いしたいことがあります」
「え……?」
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