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 半世紀近く生きてきたが、これほど破壊的顔面の女性を見たことがない。 『ガールズバーのスタッフにしては』とか『タイプじゃない』という次元ではない。  誰が見ても目をこすって見直してしまう程のインパクトがある。  あれだけ寝ることしか頭になかった俺の目が覚めたんだから。 「おにいさん、飲んでってよぉ」  俺は声の出し方を思い出した。 「あ、あの、申し訳ないけど今極度の睡眠不足だから店で寝ちゃうかもしれないけどいい?」  断られる可能性を生む確認だったが、あまりにも無惨な容姿に狼狽してつい余計なワンクッションを入れてしまった。 「お酒頼んでくれるなら大丈夫だと思うけどぉ」  するとちょうど地下の階段から別の女性が出てきた。 「交替だよん」  どうなってるんだ……。    新たに現れた女性の顔面も、ヤクザでも道をあけるんじゃないかというほど怪物的だった。  このレベルの女性が二人並ぶと、酒を飲み過ぎるまでもなく嘔吐しそうなほど不快だ。 「あ、お客さん?入ってって下さいよん。雪の日はうちすっごい安いですよん」  あまりの光景に数秒フリーズしてしまったが、俺は脳の働かせ方を何とか思い出した。  今は屋内で寝たいだけだから彼女たちの人知を超えた容姿は関係ない。  世紀の不美人二人について行き地下の店内に入ると、「いらっしゃいませ〜」と愛嬌のよい複数の女性の声に迎えられた。  店内では数組の先客がカウンターに座っていたが、どの客もそれはそれは楽しそうに飲んでいる。  俺は席に案内されながらカウンター内にいる数人の女性スタッフを見やったが、一人残らず特撮ヒーローものに出てくる怪人みたいな顔面の女性だった。  なぜそんな女性たちとそこまで楽しめる?寝ようにもうるさくて寝られないかもと不安になってきた。  席に着くと呼び込みをしていた彼女がメニュー表を持ってきた。  俺はそこに書いてあった店名を見て納得した。 −「ノーブスノーライフ」−  ブス専門のガールズバーだったのか! 呼び込みの女性が持っていた看板に書かれていた「スノー」という店名は、最初の「ノーブ」と最後の「ライフ」が彼女の指で隠れていたわけだ。    しかしそれにしても不思議なもので、これだけブスが集まっていたら見てるだけでも楽しくなってきて、結局俺は朝まで盛り上がって一睡もしなかった。                <終>
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