デッドワークス

3/4
前へ
/4ページ
次へ
 ああ、すまない。人のことを間違い呼ばわりするのは、流石に失礼なことだ。  けれど、どれほど取り繕ったとしても、いつかはこういう言い方をしなければならなかっただろうさ。今までだって、そうだった。  一体今まで、どれほどの来訪者にこんな話をしただろうね。もう慣れきったよ。だから、どんなに非難されようと、あまり響かなくなったんだ。  どうせ、私が忘れさえすれば、ここからも存在が完全に消え去るんだから。そう思うと、余計に。ああ、心配ないよ。きみはなかなか消えないはずだ、面白いからね。  そう、きみは面白い奴だった。けれど、けれどね、お呼びじゃなかったんだ、あの世界には。  きみがもしそこに存在したとして、どうなっていたか、ざっくりと教えてあげよう。きみは英雄になれる器だった。誰よりも讃えられる役割を担えたわけじゃないけれど、それでも偉大な人物であれた。  けれど、そうなるまでの過程、実態。これはどうだろう。ありとあらゆる場面で、誰かに役割を食われ続けた。誰かをなぞることしかできなかった。確かに何でもできたけれど、何でも半端だった。  いらなかったんだ。きみがいたところで、大してつまらなくも、面白くもならなかったんだ。だから、きみは今、ここにいる。  いやあ、残念だったよ。きみは本当に有能であれたはずだし、活躍も見込めたんだけどね、なにしろ面白くない。  それだけで世界から消すのかって、そりゃあそうだ。所詮、私には面白いことこそが最上。無駄が多いと、文句も言われてしまうことだろうし……あ、いけないいけない。普通にきみのことを語るだけで、ついつい悪口になっちゃうな。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加