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一方で
職場は楽しい時間だったが、私には前々から他言できない重たい悩みがあった。
母である。
地方から出てきてひとりでいるのも、その母からなるべく離れていたいからだった。
子供の頃から情緒不安定の母から虐待された。
優しい顔は一瞬で豹変し痛みとなる経験を重ねながら育った。
母の性質を知るのは家で一緒に暮らしている一人娘の私と父、父の母親である祖母だけだった。
祖母は、仕事と自分の介護と子育てでいっぱいいっぱいの母を悪く言わなかった。
許してやってね、と、私に言った。そして私が小学生の時他界した。
父は事業を立ち上げ孤軍奮闘し身体を壊した。
若くて美しく笑う優しい女性に癒しを求めた。
私の母の顔には深い皺が刻まれ年齢以上に見えた。常に他人の悪口や愚痴を言い続け、自分の境遇に不満をこぼし、未来に希望を持たない。
ストレスが溜まると衝動的になった。
私は自分の人生を生きる為に避難したのだ。
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