希望と期待

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希望と期待

今の職場に出会ってから、私はご婦人たちに教わったいろいろな開運方を母にも伝えていた。 年金暮らしで一人暮らしの母は、趣味も持たず毎日テレビを見ては文句を言う日々を送っているようだった。 拭き掃除したら清々しいよ。 窓を開けて空気を入れ替えると気持ちいいよ。 たまには公園とか散歩してみたら。 月に一度は、この花玄関に飾ってね、と、 母の人生が明るくなるようにいろいろ提案はしてきた。 そんな母から言われたのは、 「あなたはすっかり垢抜けて綺麗になったね。 表情も明るくて。押し付けがましくて。 そのスピリチュアルとかで元気になれるのは あなたみたいに元気になる元気がある人さ。 お手本面して来ないでよ。」 「みんな私のような不幸を味わえばいい。そのお嫁さんとやらが病気になったのは、開運だ暦だと言ってる姑のせいじゃないのか?」 「その会社の人たちは、他人の不幸を餌にして、自分たちの楽しみにしてるだけさ。 その証拠に、いつもどこかに困ってる人がいないか探してんだろ。周りに困ってる人がいないとつまらないんだろう。 他人の不幸を喜んでんのさ。」 そう言われて実家を後にした私は、電車とバスを乗り継ぎ半日かけて自分の部屋に戻った。 もしこの悩みを打ち明けたら、ご婦人たちはどうするだろう? 考え初めてすぐに止めた。 楽しい時間を失いたくない。 楽しめる悩み以外は、自分で消化しよう。
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