赤い鎖が消えたら

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「やっぱ、新しい家は温ったかくて良いね」と言いながらお婆ちゃんはリビングの椅子に座った。 「どうぞ」と母がお茶の入ったコップをお婆ちゃんの目の前に出すと「ありがとう」とお婆ちゃんは言って、それからコップの中の湯気の立つお茶をじぃっと眺めていた。 お母さんが私の隣に腰を下ろすと、お婆ちゃんは口をもごつかせながらちょっと笑ってからそれからまた少し経ってから「…いっつもごめんな」と私と母に向かって謝って来た。 私達は少しだけ驚いたがお婆ちゃんが何について頭を下げているのかは察しはついていた。 「また“叫び声”聞こえてきたから嫌になったでしょう?本当に、本当にごめんなぁ…」やっぱり叔母さんの事で謝りに来ていたのだった。 何度も言うが頭の中では“仕方のない事なんだ”、“叔母さんだってそんな病気になりたくて生まれて来たわけじゃないし、お婆ちゃんだってそんな病気を抱えた子にしようと願って叔母さんを作ったわけじゃないのだから”と。 だけどやはり頭より気持ちの方が大きい私は叔母さんが精神に関する病気を抱えた人だと分かっていても、騒ぎつかれていびきをかいて寝て始めた叔母さんの隙を見て家を出たお婆ちゃんが近所の人達に謝る姿を見ると「何でお婆ちゃんが謝らなきゃならないの!?お婆ちゃんは何も悪くないのに!何でお婆ちゃんは自分の娘に毎日“死ね”と言われなきゃならないの!?何でだよ!ふざけんなよ!!」と、どうしても腹が立ってしまう。 この世に神様が居るなら皆の代わりに地獄に落ちてもいつも微笑んでいるあの顔に右ストレートをぶち込んでやりたいものだ。
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