赤い鎖が消えたら

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「はぁ…情けない…」お婆ちゃんが消えそうな声で呟いたのが聞こえた。 何に対して言ったのか、自分か娘である叔母さんに向かって言ったのか、分からなかったけれどそれ以上深く聞くのはなんとなくやめておこうと思い私も母も黙った。 それから少し3人で別の話しで笑い合った。この日、久しぶりにお婆ちゃんが笑っているのを見た気がした…。  いつ、いつ疲労で倒れてしまうか分からないお婆ちゃんがいつも心配だ。 あの日のお婆ちゃんの話しを聞いてからかな。だけどそれ以上にいつか本当にお婆ちゃんが倒れてしまって義姉である私の母の元にあの叔母さんが回って来たらどうしようと不安が私の中で大きくなっていた。 あの叔母さんに今度は私の母が死ねだのクソババァ呼ばわりされる日が来るのかと考えて眠れない日だって何度もあった。 もしその時が来たら私は本当にあの叔母さんに何をし出かすか私自身も分かったもんじゃない。 叔母さんは病気だ。仕方ないんだ。理解出来る人が理解してあげなくてはならないんだ、分かっていた。ちゃんと分かってる。でもそれでも叔母さんを好きになれない。 感情のコントロールが出来なくて一度どこかでぷちんと糸が切れると言いたい事を自分が落ち着くまで叫んでは周りに散々迷惑をかけても次の日にはポンッと記憶が抜けたように何にも覚えてなく けろりとした顔で皆の前に出て来るあの叔母さんが大大大大大嫌いだ。あれがいつか私の両親の前に現れる その日を想像しただけで震えが止まらなくなる。
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