赤い鎖が消えたら

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……だけど、私が大嫌いな叔母さんは私は大嫌いでも決して悪い人ではなかった。 ただ精神疾患と言う厄介な病気が彼女の良い部分を押し潰してしまっているから見えないだけで本当は優しい人なんだろうとは分かってたつもりだった。 叔母さんは特に動物に優しかった。動物が大好きで散歩中に犬を連れて歩く人を見かければ「あら可愛い!」と言って子供みたいに無邪気に笑いながらすぐ駆け寄って「よしよし」と頭を撫でたりしてたし、灯油を買いに自宅近くのホームセンターに灯油タンクを持って買いに行ったりすれば店の中にあるペットショップに走って行き「わぁ〜〜〜っ!」と本当に嬉しそうな顔でショーケースの中を覗き込んではケースの中でうつらうつら寝深きしている犬や猫に周りに居る他の客の目を気にする事なく手を振ったりしていた。 私よりはるかに歳上でも病気のせいで私より精神面が子供の叔母さんはお正月になると周りの大人達の真似をして無い金をポチ袋に入れて私達姪っ子に「あげる」って100円玉だけ入ったお年玉をくれたりした事もあった。大嫌いな叔母さんからの贈り物は何を貰っても嬉しくない。だけど要らないよとも言えなくて結局受け取って、でも使いたく無いから妹にあげた。 「せっかくくれたのに何で?」って妹に聞かれたけど、「あんたが使いな」ってしか言えなかった。叔母さんが嫌いだからなんて誰にも言えなかった。どれだけ優しくされても叔母さんだけは好きになれなかった。「クソババア!」と叫ぶ、「死ねババア!」と叫ぶ、お婆ちゃんをいつも泣かせる叔母さんがどうしたって好きになれなかった。病気だって分かってても私は優しくはなれなかった。
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