赤い鎖が消えたら

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 太った身体で暴れては叫びまくるあのババアが私は大嫌いだ。 正体は私の叔母さんで彼女は生まれつき精神疾患を持っているため、感情のコントロールが自分で出来ず一度怒りのスイッチが入るともう誰にも手がつけられない。  新しい一年が始まって2週間くらい経った頃だろうか。 夜7時過ぎくらいに珍しくお婆ちゃんから「少し遊びに行っても良いかい?」と私の家に電話がかかってきた。 電話に出ていた母はもちろん「良いですよ」と笑顔で返事を返したけど受話器を置いてから私の方を見て「一体“今度は”何したのかな?」と眉を寄せて聞いてきたので正直母はお婆ちゃんが家に来るのが不安で仕方なかったようだった。 しかし 良いよ。 と返事してしまったので私と母は並んで座って流れているテレビも観てるようで全く観れていない中どきどきしながらその時を待っているとしばらくして疲れ切ったような感じでお婆ちゃんが家に遊びに来た。もちろん一人でだ。 お婆ちゃんは暖ったかそうな白のアーガイル柄のニットの上着を着ていて、頭には手作りの白いニット帽を被っていた。片手にはスーパーのビニール袋を持っていて「けっからや」と渡された袋の中には赤1つ、黄色2つの形の悪いりんごが3つ入っていた。“ふぞろいりんご”と言うやつで鳥や虫がつついた跡があるためお母さんはあまり好きではないみたいだが私は昔から形の良いりんごよりこちらの方が甘いから好きだったので貰えた時ちょっと嬉しかった。
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