カモミール

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暫く経ったある日、噂はすでに何処からか漏れ出ていたみたいだった。次の授業は移動教室だったので教室から廊下に出ると、が始まった。 「あれって噂の子?」 「ね、それってニ年の」 ヒソヒソと廊下を歩く度に聞こえてくる声。あれ、それとか隠してるつもりなのか知らないけれど、そういうのがとても嫌になった。日を跨ぐ度に増えていくその声は、普段通りの生活を壊しにくる嫌なものになってて、最初冷やかされた時とは違う、何か棘のある感じだった。かといって実害が出るわけでもなくて、直接聞くのもなんだか怖くて出来ない私は、1番の友達の所に逃げ込むことにした。 「失礼しまーす」 ドアをゆっくり開けると、保健室には誰もいなくなっていた。視線を奥の方にやると、案の定カーテンも閉めずにベットに寝転がる人を見つける。気づかれないようにゆっくり近づくと、スマホを手に持ちながら爆睡しているようだった。保健室スマホ禁止なのに余裕だな、と思いつつこっそりスマホを手から抜き出す。間抜けな顔に笑いそうになる気持ちを抑え、ベットの端の方に腰をかけた。 「えーと、パスワード464925だっけかなー?」 起きているかの確認をしつつ、よ、ろ、し、くと数字を打つとスマホのロックが解除される。変わってないんかーいと思いつつ、スマホに映し出された文字列を読もうとする。 突如、背中と肩にすごい重みを感じた。 「こら、なにしてんねん」 眠そうな声と視界の端から伸びてきた腕がスマホをサッととって消えた。と同時に重みも消える。 「いらっしゃーいおひさ」 「ごめん、寝てるか思ってつい」 振り返り、手を合わせながら「このとおり」と大袈裟に謝ると、彼___光成君は大きな口を開けてニッと微笑んだ。
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