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ジューーー。
デミグラス・キノコを温めて終わった。このタイミングでオムレツを焼き上げるのが、定番スタイルだ。さっきと同じように、早瀬の体へすがりついている。真後ろから焼いているところを眺めたいからだ。このライブ感に病みつきだ。さらに早瀬の動きに合わせて、俺も移動する。名付けて愛情ステップだ。
「悠人君。いくぞーー」
「はーい。右にフライパンを振る?」
「今日は右からだ。右、左、右、いくぞー」
「おーー」
「右、左、右」
「みぎ、ひだり、みぎー!」
「キノコ、キノコ、キノコ」
「ソース、ソース、ソース!」
「呪文、呪文、呪文」
「クルクル、ステッキ、最大量ー!」
「ほーら、美味しくできた」
「へへへ。スープは運んであるからね」
「よく出来ました」
カタ……。
ダイニングテーブルに向かい合い、アツアツのオムレツを前に幸せをかみしめた。幸せは儚くて、すぐに消えるものだというが、その度に小さな幸せを見つけたい。こうして料理が美味しいと感じるのは、体が健康だからだ。おまけに早瀬の笑顔つきだ。
「いただきます」
「いただきまーす!」
愛の呪文、愛情ステップ。たどり着いたのは、こんなささやかなやり取りだ。これが、俺と早瀬とのストーリー。
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