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 キッチンは明るくて快適そうだ。リビングのテラス窓からは庭が見える。芝生の庭だ。花壇に花を植えたら明るくなりそうだ。それに、端っこに置いてあるブランコが可愛いと思う。早瀬達が遊んだものだろうか。 「あのブランコは兄妹で遊んだの?」 「ああ。親父が手入れして、記念に残してくれている」 「優しいね!」  そこで、お母さんのことを聞いてみたくなった。俺がここに住むのはいいのだろうか。それを早瀬に聞くと、大丈夫だと答えが返ってきた。お父さんと莉奈さんが出て行った後、お母さんは一人でここにいるのは寂しかったのだろう。だから出て行った。俺達が住むと、戻って来づらいのではないだろうか。 「母は離婚した後は、この家には戻ってこないだろう。親父とやり直すなら、戻ってくるだろう。その時は、また引っ越せば良い。顔を合わせさせたくない」 「寂しいよ。でも、親を嫌う気持ちは分かるよ……」  俺の方こそ、両親を遠ざけていた。俺には祖母がいた。温かい気持ちをもらっていた。早瀬は優しい人だ。だから、お母さんも優しいのではないかと思った。そんなことはないのだろうか。しかし、早瀬が話そうとしない以上、どんな人なのか聞くわけにもいかない。話題を変えようと思いつつも、気になることを口にしてしまった。 「俺との仲を反対されていないかな?」 「反対はされていないよ。ただし、縁談は持ってこようとしていた」 「あったんだね……」 「親父が止めている。俺もシャットアウトしている。何があっても君のことを守る。こんな言い方はしたくないけど、祖父も叔父も君のことを気に入っているみたいだ。夏樹君と親しいのが気に入ったそうだ」 「うん。うちのお父さんの前の姿みたいだよ。変わっていないかも知れないけど」 「君のお父さんは大丈夫だ。君には応援団がついている。まず俺がいる。安心してくれ」 「うん!」  早瀬の力強い言葉に、俺も頑張ろうという気持ちになった。そして、ここに住みたいと伝えた。すると、二階に上がろうという話になった。早瀬が使っていた部屋があるそうだ。 「みんなの家は向こうのスペースなんだろーー?」 「大学時代はこっちに住んでいたんだ。俺一人で」 「そっか。寂しくなかった?」 「幽霊が出るって噂があったから、興味があって、住んでみたんだ」 「げええええっ」 「君は心霊関係は平気だったっけ?」 「番組を見るのは好きだけど、実際に起こるのは嫌だよ!」 「だったら、もう一つのスペースにするか」 「裕理さんの部屋に行ってみたい!」 「案内する」  早瀬に連れられて、二階に上がった。広い階段だ。子供の頃の早瀬はここで探検していたのではないかと思った。俺なら、そうしそうだ。
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