12-2

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 カタカタ……。  散策中に買ってきたジュースを持って、リビングに入った。ここは庭に面しているから風通しがいい。  早瀨は今回のことがある前から、引っ越しを考えていたそうだ。すぐ庭に出られる家が好きだろうと思い、俺のために物件情報を見ていた。しかし、あの遊歩道を気に入っているから、具体的に引越しは考えなかったという話だった。 「地面に近い方がいいだろう?たまには遊歩道に遊びに行こうね」 「うん。明日の帰りに寄ろうよ」 「遠出するから、今夜はゆっくり寝ておこう。やることを済ませた後で」 「何を?あああ……」  サラッと発言するから厄介だ。わざと距離を取って座り直した。昼ご飯まで時間があるが、ドーナツの袋をガサガサと開いた。甘いムードを壊したいからだ。さっと視線を向けると、早瀬は庭を眺めて微笑んでいた。その姿に胸がキュンとなった。  この家に溶け込んでいる。引っ越す前は困っていた様子もあったが、いざ暮らし始めると楽しそうにしている。俺が一緒に居るからかな?そうだったら嬉しい。 (カッコいいな。今の瞳の色が似合っているよ……)  庭を眺めている早瀬の横顔に見惚れた。バレないように、慌てて視線を戻した。するとその時だ。早瀬が庭へ視線を向けたままで、笑い声を立ててきた。バレたのか?俺の方を見ていないのに。 「ゆうとー、堂々と見なさい」 「え?見ていないよー?」 「……”俺が減るから、あんまり見るな”」 「夏樹語録を出すなよ。ひねくれ発言だよー」 「捕まえた」 「あああ……」  勢いよく抱きつかれたから、ドーナツを落としそうになった。慌ててテーブルに置くと、その隙に膝の上にホールドされてしまった。わき腹をくすぐりながら。 「やめてよーーー」 「ここはどうだーー?」 「ひゃひゃひゃ。やめてー!……あれ?ポーンって?」 「いいところだったのになー」  チャイム音が聞こえてきた。訪ねて来るのは限られた人しかない。夏樹たちは、来週遊びにくる。だったら佐久弥だろう。理久を連れてか?早瀬の反応を見ると違うようだ。モニター画面には、宅配ドライバーが映っていた。 「悠人君にプレゼントがある。到着したぞーー」 「何かな?月夜のグッズかなーー?」  開けてのお楽しみだと笑っている早瀬と一緒に、玄関へ向かった。
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