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12-3
ガタガタ!ガタガタ……。
俺は玄関先で待っている。早瀬と宅配ドライバーが、大きな段ボールを運んできた。重さがあるようだ。それが玄関に到着して、早瀬が伝票にサインをしている間に、段ボールを開封した。
「悠人君。指先を怪我するといけない。かわるよ」
「うん。お願いしまーす」
梱包材が解かれた後、全体が見えてきた。その正体が分かった瞬間、胸がじんわりと熱くなった。古びた丸い椅子が入っていた。木を切り落とした丸太のものだ。
祖母の家の庭で使っていたものだ。実家に持って来られなくて、外に置いたままにしていた。雨ざらしで傷んでいるかと思っていたのに、当時のままだ。早瀬には写真で見せたことがある。一度だけなのに、覚えていたのか。
「今住んでいる人を知っている。お願いして送ってもらった。RW&社に勤務している、江川さんという方だよ。物置で保管してあると教えてくれた。お礼の電話を入れておく。……これだろう?おばあちゃんの庭で、一緒に写っていた椅子は。綺麗に拭いてくれているぞ……」
「ありがとう……。うぇ……」
どうしよう?綺麗にしてもらったのに、俺の涙で濡れてしまった。顔を拭くふりをして、早瀬に抱きついた。
早瀬が育った家に、俺の思い出も引っ越してきた。これからは、この家に、沢山の良い思い出を詰め込んでいこう。早瀬のTシャツが濡れても構わない。両腕が疲れてくるまで、温かい身体にすがりついてやった。
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