2-4

1/1
前へ
/143ページ
次へ

2-4

 12時半。  学食”薄味”にて、昼ご飯を食べている。相変わらずの空き具合だ。来年からは理学部へ入り、キャンパスを移る。ここが気に入っているが、新しいキャンパスからは徒歩で15分の距離で遠めだ。来られない距離ではないが。たぶんこれからは、向こうの学食に通うだろう。リサーチをしてある。しかし、味の方が分からない。夏樹は薄味派だから悩んでいる。 「大丈夫だよ。向こうの方は店が多いんだよ?ビュッフェスタイルの学食もあるし」 「味が濃いかもしれないのか~」 「来週食べに行こうよ。森本達も誘って」 「そうだね~。……あ、理久からラインが入ったよ。” 真羽君と学食で食べているよ。ソクラテス食堂。ビュッフェだよ”って」  そうなのか。ソクラテス食堂か。タイミングがいい。そこが候補の学食だ。 「聞いてみたら?味付け」 「うん。……返事がきたよ。”普通の濃さだと思う。うちの家も薄味だよ。信用していいよ!”……よかった~」 「ふむふむ。信用されないことがあるのか……」 (あの子が嘘をつくわけがないのに?)  同じ大学に通っている如月、藤沢の話を思い出した。学生同士に派閥ができて、足の引っ張り合いになっているそうだ。卒業生の早瀬にそれを話すと、在学中にはなかったと言って驚いていた。 (何があるんだろう?競争が出来ているってことだ。就活、成績……)  はあ。勝手にため息が出た。自分たちこそ競争の中に飛び込んだ。良いか悪いか、数字として跳ね返ってくる。分かっていても、今更のようにビクビクするときがある。 「だめだだめだだめだー」  チキン南蛮を頬張った。夏樹の方を向くと、黒崎さんとの、ラインやり取りを始めていた。ニヤけている姿を見ると、ネガティブになるのがアホらしくなった。 「夏樹が足りないだってさ~。ええ?いきなり見たいんだ~。どこを?ヒョーーーーッ」  夏樹が持っているオシボリで、バシバシとテーブルを叩き始めた。さらに料理の皿に当たった。そこで、慌てて皿を押さえて、落っこちるのを阻止した。 「なつきー、危ないよー」 「ウヘヘ、ごめんね。ひゃひゃひゃ」 「はいはい。仲が良いのはいいことだよ!」 「ふふん」  カボチャが付着したオシボリで、ニヤけた顔を隠していた。だから今度は夏樹の顔が黄色くなり、俺の方が悲鳴をあげてしまった。なんと緊張感のないことか。自分一人なら、デビューまでたどり着けなかったはずだ。  カボチャを拭いてやり、素敵なラインの内容に耳を傾けた。夏樹がこういう子だから、俺も乗り越えられているのだろう。そう強く実感した。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加