9.想いとともに

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「颯真さま、どうでしたか?」  琥珀が舞を終えて颯真に近寄る。 「あ、圧倒されて。その、天女みたい、いや、雪の精? ごめん、うまく言えない」 「十分ですわ、颯真さま」  うろたえる颯真の様子に、琥珀はくすくすと笑う。 「白蘭(びゃくらん)の最後の舞を見ていただきたかっただけですから」 「白蘭?」 「私が賜った名です」 「新しい名前? 最後って?」 「私、『三巫狐』を辞めてきました」 「ええ!?」  驚く颯真の前で、琥珀は亜麻色の毛と琥珀色の瞳に戻った。   「私はただの『琥珀』に戻りますわ。新しい夢が見つかりましたから」 「新しい夢?」 「はい。私は颯真さまのおそばで一緒に働きたいです。人間の姿に変身できるようにもなりました」  琥珀は瞬時に、大きな尻尾と狐耳を消して見せた。 「それから、幽世での喫茶店の営業も提案します。幽世で営業すれば、颯真さまの能力を活かせますでしょう?」 「琥珀、僕のことも考えてくれてたの?」 「はい。私、ずっと颯真さまをお慕いしておりますので、きゃ!」  トクトクと鼓動が速まる琥珀を、颯真が抱きしめた。 「ありがとう。僕も琥珀を忘れたことはなかったよ。帰ってきてくれて嬉しい。けど、ちょっと寒さが限界。琥珀、続きは中で話そう!」  颯真はひと足先に家の中に入っていった。ひとり残された琥珀がトボトボと中に入ると、紗代が琥珀に声をかけた。 「おかえり琥珀ちゃん。ごめんね、あの子ってば鈍感で」 「紗代さまには私の気持ち、お見通しでしたか。大丈夫です。これしきのことで、めげてられませんわ」  琥珀は清々しいまでの笑顔を紗代に向けた。
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