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1.プロローグ - 琥珀 -
「一族の汚点!」
「恥さらし!」
これは私がこの世に生を受けてから幾度となく浴びせられてきた言葉。
私は神に仕える白狐一族に生まれた。神職として正式な名を与えられるまでは仮の名で呼ばれる。白く生まれることができず、薄汚れた色の毛に黄ばんだ瞳を持つ私は異端。そんな私には仮の名すらもない。本来なら社の敷地外に住むことになるところだが、母が三巫狐という重要なお役目を務めてきたため、母の部屋に住むことが許されていた。
「あなたは私の子、胸を張りなさい」
「白くなくても、あなたは美しい」
母はいつも優しい言葉をかけてくれる。三巫狐として舞を奉納する母を隠れ見た日から、母は私の憧れ。母からの言葉は嬉しく思えたが、完璧な母と現実の私の境遇を比べると、素直に受け入れられず、心に暗い影を落とすこともあった。
でも母だけが味方だった。唯一の拠り所だった。なのに、その母が病で亡くなった。
母がいなくなった途端に部屋を追い出され、私は今ひとり雪を踏みしめ歩いている。
社での下働きをすれば衣食は確保できるけど、日が暮れるまでに住む場所を探さないと。この先に、空き屋でもあればいいのだけれど……ううん、家じゃなくてもいい。せめて雨風をしのげれば。
「……あった」
古そうな一軒家を見つけた。引き戸を開け、中に入った。
床にぺたりと座り込む。母を失った悲しさとこの先の不安から自然と涙が溢れてくる。
薄暗い部屋で寒さに震えながら、私は頬を濡らした。
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