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魔法は呪い
ボクは視線を逸らせた。端から魔法なんて信じていない。
「フフゥン、じゃァジャスティンの目の前で魔法を披露すれば信じるワケェ?」
マリアも笑みを浮かべ挑発するように訊いてきた。
「えェッ、まァそうだな」
どうせ魔法なんてまやかしだ。ウソに決まっている。
「良いこと。魔法は呪いなんだから」
だが彼女はシリアスな眼差しを僕へ向けた。
「え、呪い……」
「そうよ。魔法に掛かったら、解ってるわね?」
「なにを……」
「もしマリア以外の女の子に色目を使ったり浮気をしたら地獄の業火に焼かれて、未来永劫に苦しむ無限地獄に陥ることになるのよ」
マリアはボクを脅すような事を言った。
「ううゥッ、マジかよ」
浮気をしたら無限地獄だって。リスクが高い。
少し怖気づいてきた。
「わかったわね。マリア以外の女子に心を奪われたら許さないわ」
マリアはボクの事を睨みつけてきた。
いつものように嫉妬深い。彼女は独占欲が強くワガママだ。ボクがマリア以外の女子と遊んでいると烈火のごとく怒り出す。
「あッ、ああァ」
ボクも仕方なくうなずいた。
「じゃァ目を瞑りなさい」
「えェ……、ウン」渋々、彼女の指示に従って目を閉じた。
「良い。絶対に目を開けちゃダメだからね」
さかんに彼女は念を押した。
「はァ」
あまり居心地は良くないがボクは彼女に従い目をつぶったまま、しばらく待機した。
ノスタルジックな音楽だけが部屋に流れていた。『マリーゴールド』だろう。
やがてボクの唇に温かくて柔らかいものが重ねられた。
「えェ……?」
これは。間違いない。
キスだ。
しかし気づいた瞬間、ボクの目はマリアの手で覆われてしまった。
目を開けることができない。
「うッううゥ……」
ボクはキスで唇を塞がれたままかすかに呻いた。
一気に心臓が弾んだ。
ボクに取って生まれて初めてのキスだった。
さっき食べたチョコレートのように甘い口づけだ。
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