キスのお味

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キスのお味

 さっき食べたチョコレートのように甘い口づけだ。 「……」ボクは()すがままだ。  どれほど時間が流れたのだろう。初めてのキスは、まるで夢のような出来事だ。  なんとなく身体じゅうが火照って、いまだに夢見心地だ。かすかに全身が戦慄(わなな)いた。 「フフゥン、どうかしら。キスのお味は?」  マリアも恥ずかしいのか、ほのかに頬を赤らめて訊いてきた。 「えェ……?」  まだボクは酔っ払ったみたいにフワフワした状態だ。頭が良く働かない。 「これで浮気をしたらただじゃぁ済まないからね」  マリアは(おど)けてボクの腕を指先で突っつき脅してきた。 「ただじゃ済まない?」 「そうよ。どっかのアイドルにうつつを抜かしたら許さないわ。もちろん、一般の彼女だとしてもね」  マリアは大きな瞳でボクから視線を外さない。 「はァ」ボクは困惑ぎみに眉をひそめた。  こうして、ふたりの関係は新たなステージへ進んだ。  幼馴染みから恋人へ。
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