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ドンドン ドンドン
「兄上!カミーユです!入りますよ!」
カミーユとは思えない、乱暴で礼儀の欠片もないノックだ
「どうしたカミーユ?入っていいぞ」
書類にサインをしながら答えると、勢い良く扉を開けて、カミーユが入って来た
「兄上!たった今、父上から聞いてまいりました!一体どういう事なのです?」
カミーユがとても怒っている
こんな顔のカミーユを見るのは初めてだ
「……カミーユ。…せっかくの可愛い顔が台無しじゃないか」
思っている事をそのまま伝えてしまうと、
「兄上!おふざけにならないで下さい!僕は、本当に怒っているのですよ!」
益々怒らせてしまった
「ああ…。悪い、お前を見ると、ついな…。何をそんなに怒っている?」
「…何を?…兄上、本気で仰有っているのですか?では、ルイーズ家の姫と婚姻をなさるというのは、僕の聞き間違えですか?」
信じられないと言いたげな表情で、そう聞いてきた
「いや、その通りだ。兼ねてから進めていた話ではあったが、無事まとまって良かっ…」
「兄上!何故です?何故そのような事を?兄上は…ジュリアと…お二人は………」
カミーユは、ぎゅっと両手を握り締め、俯いたまま、何かをこらえているようだった
俺はペンを置き席を立ち、ソファーへと向かった
ドサッと座り、
「カミーユ。こっちへおいで。少し話をしよう」
そう声をかけると、少しの間の後、ゆっくりと歩き、俺の隣へと腰掛けた
「カミーユ。お前は賢い。剣の稽古は時々休んでいるようだが…。勉強は俺よりずっと出来る。俺の選択は、この国にとって間違っているか?」
困った様な顔で少しの間考えたカミーユは、
「………いえ」
そう一言だけ返した
「何故そう思う?」
俺が出した政治的な問いにカミーユが答える
俺達は時々、そうして遊びながら、共に知識を深めていった
カミーユの答えに俺はよく、何故そう思う?と聞き返した
その度にカミーユは、ここぞとばかりに自分の持てる限りの知識を総動員し、目を輝かせながら、俺を驚かせる程の理由を述べてみせた
そして最後に、俺が頭を撫でながら、凄いと褒めると、
「当然です。僕は兄上を一番傍で支えていく者なのですから」
そう誇らしげに笑っていた
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