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「なあ、カミーユ。アメリア姫は、俺と同い歳だそうだ。恐らく、城の外にすらほとんど出た事のない姫が、家族と離れて見ず知らずの地へ、大きな責任を背負ってくるんだ。せめて、最低限の誠意くらいは、見せてくれる国なのだと思わせてやりたい」
「……では…僕がジュリアと婚約するというのは……それも、兄上の意思なのですか?」
再び潤んだ瞳で見上げてくる
「ああ、そうだ。先程言った通り、この国において、ヌフヴィル家は最も重要な間柄だ。俺が婚姻出来ないのなら、ジュリアの相手はお前であるべきだ」
「俺が出来ないのならって……そんなに簡単に言えるのですか?兄上とジュリアの間には……少なくとも特別だと思える感情があったはずです。それを……」
怒りと悲しみが混じり合った様な…
裏切られたと訴えているかの様な…
そんな表情だ
「俺もジュリアも、一度でもそんな気持ちを表した事はないはずだ。そして……もしも、万が一お前が思っている様な感情を抱いていたとしても、それは婚姻には関係のない事だ。俺も、お前も、ジュリアも、物心ついた頃には、既に理解しているはずの事だ」
「理解はしています……充分過ぎる位に……でも、だからこそ……そのお相手が、せっかく手の届く可能性のある所に居られるというのに……」
「そうだな…。お前だったら、もしかしたら……。だが、生憎俺は小心者なんだ。……すまないな。俺がどう言おうと、お前には、この先一生余計な気を遣わせてしまう事になるだろう。だけど、お前でなければならない。この国の為にも、ジュリアの為にも、俺の為にもだ」
再び俯いたカミーユから、零れ落ちてくる
「……っ…兄上は……っ…僕とジュリアが家庭を築いていく様を見て……っ…っ…お辛くはないのですか?」
この、真っ直ぐで、純粋で、優しい弟が、大切な人と共に居てくれるのだ
「辛い訳がないだろう?俺は昔から、お前とジュリアが笑っているのを見るのが、何よりの幸せなんだぞ?俺の一番大切な二人が一緒に傍に居てくれる。こんなに恵まれた事はない」
そう言って、必死に泣き止もうと頑張っているカミーユの肩を抱き寄せる
「なあ、カミーユ。俺が誰と結婚したって、お前はずっと可愛い弟だし、ジュリアは大切な親友だ。それは生涯変わる事はない。そうだろ?」
「……っ…はい。…でっ…でもっ……僕は、可愛い弟じゃっ……なく……頼りになる弟になります!…っ」
「ははっ。そうか。それは頼もしいな。じゃあ、剣の稽古もサボらずに頑張らないとな」
そう言って笑うと、カミーユも涙を浮かべたまま笑った
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