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「ジュリア、カミーユ。今年も受け取ってくれるかい?」
「勿論です。ありがとございます、リシャール様」
白い生地を少なめに使ったドレスを身に纏ったジュリアが、嬉しそうに微笑んで受け取ってくれる
「ありがとうございます、兄上」
白に近い色の装いで、カミーユが受け取る
「君達は優し過ぎて、お花が可哀想だからと、いつも一本しか受け取ってくれなかったが……今日だけは花束にさせてもらったよ」
「綺麗ですね。ほんとに可愛らしいお花ね」
ジュリアが嬉しそうに花束を見ている
それを見ているカミーユも嬉しそうだ
「ジュリア、カミーユ。改めて正式な婚約おめでとう。これから忙しくなるだろうが、まあ頑張ってくれ」
「僕達より、兄上の婚礼の儀の準備の方が、大変ではないですか」
「アメリア様は、来月いらっしゃるとお聞きしましたが…」
いよいよ来月アメリアが来る
そして、カミーユとジュリアの婚約お披露目パーティーだ
「まあ、そうだが…俺がやるべき事はほとんど終わっているからな。………ジュリア、カミーユ、俺が君達に花を贈るのは、これが最後だ」
「はい。その方がよろしいかと思います」
「………そうですね」
変わらず微笑んでいるジュリアの横で、カミーユがあからさまに寂しそうな顔をしている
「これからは、花を贈るのなら妻となる人でなければな。ただ……この先どれだけの人に出会っても、俺がこの花を誰かに贈る事はないだろう」
「兄上……」
「初めてこのお花を見て、このお花の事を調べて、毎年リシャール様が私達に贈って下さるようになって…。沢山の幸せを頂きました。本当にありがとうございました。どうぞ、これからは、その愛情をアメリア様へ贈って下さい」
「ああ。そうするよ。だが、俺達の絆は永遠だ」
ジュリアは幸せそうに微笑む
きっと、俺と婚姻する事になっていても、全く知らない誰かとそうなっていたとしても、俺達の前では、こうして幸せそうに微笑むのだろう
大丈夫
幸いな事に、相手はカミーユなのだから
きっと君は幸せでいられる
この花の意味を知ってから毎年、幸せを贈ってきたのだから
君達は二人して優し過ぎるから
きっと悩んだり、落ち込んだりする事が多いだろう
だから、本当は花を贈り合う日だと知って、君達も贈ってくれようとしてくれた時、俺は我が儘を言って断った
一つでも多くの幸せを渡しておきたかったから
君達が幸せに笑っていてくれる事が、俺にとっての最高の幸せだから
ジュリア、君は気付くだろうか?
最初で最後の花束の中に、13輪の花を咲かせた物がある事に…
ただのジンクスかもしれない
それでも、一度も弱さを見せず、俺達を頼ろうとしてこなかった、強くて優しい君へ
少しでも多くの幸せが訪れますように………
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