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でも、佐川君は教えてくれなかった。
誤魔化すように首を振る。
言いたくないことなのかな……?
そう考えた私はそれ以上聞くのはやめる。
会話もないまま前を見て歩いていると、視線を感じた。
主に私の唇が見られているような気がする。
「そんなに気になるなら、もう1回する?」
「えっ、な、何を……」
「キスを」
そう言うと、また佐川君の顔が赤くなっていく。
もちろん冗談のつもりだった。
ショックだったわけではないことは分かったけど、したいわけじゃないだろうし。
「ほんとウブなんだね、佐川君って」
「……揶揄うのはやめてよ、浅野さん」
「揶揄ってるつもりはないよ?」
「だったら、尚更タチ悪い」
耳まで赤い。
もしかして、冗談でも言っちゃいけないことだった……?
「あ、あのさ、今日は一緒に帰るのやめよう」
「え?あ、うん。分かった」
珍しいなと思いながら頷く。
今日は一緒に帰るのなしになったみたい。
走るように去っていき、その場には私1人だけ残された。
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