兄を消した償い

1/14
前へ
/14ページ
次へ
私は桐野江(きりのえ)浩介(こうすけ)。捜査一課の刑事だ。 殺人事件が発生。 被害者は植松(うえまつ)順子(じゅんこ)。 第一発見者は被害者の夫、植松秀一(うえまつしゅういち)。 小学生時代からの幼馴染だ。 秀一とは同じ高校の剣道部に入り、青春時代を共に過ごした仲だ。 部内試合で秀一に小手(こて)で一本を取られたことを覚えている。 秀一は小手を得意技としていた。 秀一には別の高校に彼女がいた。 彼女の名前は森谷(もりや)可南子(かなこ)。 セーラー服が似合う美少女で、秀一とはお似合いだった。 そんな二人を私は羨ましく思っていた。 秀一には陽介(ようすけ)という兄がいた。 陽介は剣道は習っていなかったが、休みの日には俺たちと一緒に遊んでいた。 陽介は体が大きく力持ちで、気はとても優しいやつだったが、不登校になり高校には進学せず、たまに日雇いで働いていた。 私、秀一、陽介、そして可南子の四人で遊ぶことも多かった。 秀一の彼女である可南子に、私はひそかに憧れていた。 それは誰にも言えない感情であった。 高一の終わりに秀一は転校した。 それ以来、私は秀一たちのことをすっかり忘れてしまっていた。 その秀一の妻、順子が殺された。 秀一が可南子と結婚していなかったのは意外だった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加