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「え?なに?」
「さっきの思い出して腹が立った」
「さっきの?」
「ドレスの話」
「ドレス?」
「あのエロいドレス」
「……パーティーのやつ?あれは私じゃなくて英治さんが選んだんだからね」
まるで私が好き好んであんな恰好をしていたと言われているみたいで、ぷいっとそっぽを向きながら答える。だけどすぐに美夏さんとの会話を思い出して、あ、と呟いた。
そういえば、侑生の前であの人の話を出すのはタブーだった。
まずいと思った時にはもう侑生は真横に立っていて、「わざと?」と尋ねてくる。
「え?」
「美夏に聞いたんだろ?俺が嫉妬深いって。で、その名前を出すってことはわざと俺のこと嫉妬させようとしてる?」
「え、や、……え?」
戸惑っている間にも、侑生は軽々と私を抱きあげる。そんなみゆちゃんとまゆちゃんを抱っこするようなノリでひょいっと持ちあげられても困る。
そのままベッドの上に降ろされて、起きあがる前に侑生が私の体を跨いできた。
「い、今のは侑生が先に振ってきたんだよ!?」
「むかつく」
「むかつくって……そんな子供みたいに」
「パーティーまであと五時間はあるな」
「……だから?」
「だから、する?」
口元を上げて妖しげに笑う侑生は、私の髪を掬うとそこに口付けた。
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