のろのろ先輩

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 そんなある日の放課後、珍しく希美を巻くことができた。いつもはひょっこりと飛び出てきて心臓にも悪いから、良いことだ。 「久々に一人なんだし、蓮斗(れんと)のところにでもいこうかな」  蓮斗は僕の幼なじみで、歳が一つ上の先輩だ。彼は料理が得意だから、学校でもよく家庭科室で先生と料理をしている。今日もきっと、そこにいるに違いない。 「蓮斗の野菜炒め、うまいんだよなあ」  野菜炒めの味を思い出しながら、頬を緩めて家庭科室へ向かう。 「あ、蓮斗──」  家庭科室で蓮斗のかげを見つけ、駆け寄ろうとしたその時。できたら会いたくなかった人もそこにいることに気がついた。 「──希美?」  希美は、蓮斗の前に立って、頬をピンクに染めて俯いている。蓮斗も、耳を少し赤くしている。  まさか、まさかまさかまさか。  ……告白?  希美が蓮斗に?蓮斗が希美に? 「な、んで」  蓮斗が希美に告白なんてするはずがない。現に、あいつには好きな人がいて、だから……。  なら、希美が蓮斗に告白?  断じて認めたくなかったが、そう考えると、今日希美が僕の近くにいないことが説明できる。蓮斗に、蓮斗に想いを伝えるためだ。
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