のろのろ先輩

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「やめろ!!」  弾かれたように叫び、駆け出す。二人が顔をあげる。 「え、え、のろのろ先輩?」  希美はこんな時でも僕をバカにするのか。 「蓮斗やめろ、こいつはやめろ!!」 「しっ、慎吾(しんご)?どうしたんだ」  蓮斗は困惑したように眉尻を下げ、僕の名を呼ぶ。 「なにか勘違いしていないか?なにも、カツアゲをしようってわけじゃない。希美ちゃんから、想いを伝えてもらっただけだよ」  心配してくれたんだね、ありがとう、と蓮斗は微笑む。 「俺、彼女の想い、ちゃんと受け止めたいんだ」  そう言って、希美の方へ向き直る。何を思ったか、希美も蓮斗を見つめる。 「蓮斗先輩……」  れんと、せんぱい?なんだ、他の先輩にはあだ名では呼ばないのか。それだけ僕を軽く見ていると。そういうことか。  ふと見てみると、蓮斗は、ドアの近くにいた僕にすぐ気づいたように、ドアの近くに立っている。反対に希美は、反対側の空いた窓の近くだ。 「希美ちゃん」  蓮斗が希美に微笑む。  背中がゾクリとした。  このままでは、蓮斗が希美のものになってしまう。前みたいに、普通に話せなくなる。  嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。 「希美…‥」  掠れた声で呼ぶ。歩を進める。 「慎吾?」  蓮斗が怪訝そうに言うが、どうでも良い。
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