のろのろ先輩

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 希美の目の前まで行くと、希美は驚いたように目を見開く。 「の、のろのろ…先輩?」 「それで呼ぶなよ」  思っても見ないほどに低い声が、口から零れた。相当な迫力らしく、希美が「ヒッ……」っと声を漏らす。 「慎吾、まだ彼女との話は終わってないいよ」  蓮斗が厳しい声を出す。 「んなこと関係ねぇんだよ」  一言吐き捨てる。 「しっ、慎吾先輩!私が好きなのは蓮斗先輩です。あなたじゃないんです!」  おや、こいつは一体なにを勘違いしているんだ? 「何言ってるんだお前」 「慎吾、口が悪いぞ」 「蓮斗」  蓮斗はまだ気がついていないのか?昔から鈍感だったが。けれどそんなところも蓮斗の愛すべきポイントだ。 「蓮斗。蓮斗、希美を選ぶのか?」  一つ確認したかった。完全に希美のものになるのではないと、否定してほしかった。  蓮斗をこの中で誰よりも知っているのは僕なんだ。希美なんかじゃない。この僕だ。希美よりも僕の方がずっと前から蓮斗の近くにいる。  あいつを選んでほしくない。  蓮斗は、僕をまっすぐに見つめて、 「うん、そうだよ」
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