13人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
希美の目の前まで行くと、希美は驚いたように目を見開く。
「の、のろのろ…先輩?」
「それで呼ぶなよ」
思っても見ないほどに低い声が、口から零れた。相当な迫力らしく、希美が「ヒッ……」っと声を漏らす。
「慎吾、まだ彼女との話は終わってないいよ」
蓮斗が厳しい声を出す。
「んなこと関係ねぇんだよ」
一言吐き捨てる。
「しっ、慎吾先輩!私が好きなのは蓮斗先輩です。あなたじゃないんです!」
おや、こいつは一体なにを勘違いしているんだ?
「何言ってるんだお前」
「慎吾、口が悪いぞ」
「蓮斗」
蓮斗はまだ気がついていないのか?昔から鈍感だったが。けれどそんなところも蓮斗の愛すべきポイントだ。
「蓮斗。蓮斗、希美を選ぶのか?」
一つ確認したかった。完全に希美のものになるのではないと、否定してほしかった。
蓮斗をこの中で誰よりも知っているのは僕なんだ。希美なんかじゃない。この僕だ。希美よりも僕の方がずっと前から蓮斗の近くにいる。
あいつを選んでほしくない。
蓮斗は、僕をまっすぐに見つめて、
「うん、そうだよ」
最初のコメントを投稿しよう!