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一瞬の後、ドサッ、と、なにか重く、そして柔いものが地面に落ちた音がした。
「希美……ちゃん?」
蓮斗が掠れた声を発する。
まるで赤子のように、ヨタヨタと歩いて窓の外を覗く。それに僕も続く。
花壇の上の土には、水たまりのような大きな血だまりがあった。その赤い泉の中心には、同じく体を真っ赤にして倒れている希美と、その周りに下校中であろう生徒、もとい野次馬たちがいた。
隣から断末魔の叫びが聞こえ、その後に野次馬たちも叫びを上げはじめた。
今の僕には、そんな絶叫も心地の良いBGMに聞こえる。
ようやく邪魔者が消えた。ようやく蓮斗が僕のものになる。
僕は蓮斗を、微笑んで見つめた。
「蓮斗」
花壇の上の深紅も、僕の横に立つ彼の歪んだ横顔も、すべて夕日の所為ではなかった。
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