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私
あぁ、だめだ、と私は思った。彼と付き合い始めて数か月。このままでは彼のことをものすごく好きになってしまう。いや、既に十分すぎる程、彼のことを好きになっている。誰にも渡したくなくなるほどに。そう、誰にも渡したくないのだ。誰かに渡すくらいなら、消してしまった方がいい。
あのゲームをやめた時もそうだった。私は彼を、誰にも渡したくなかった。例えそれがただのデータなのだとしても。誰かに奪われる前に、自分の手で。そうすれば、私のものになる。そんな気持ちで耐えられなくなった。だから消したのだ。
彼が私を見て微笑んでいる。あぁ、だめだ。やはり私は。彼のことを消したくなるほど、彼のことを好きになってしまっている。
ねぇ、私のものになって。
そう言うと、彼は微笑んで頷いた。本当だろうか。本当に彼は、私だけのものになってくれるのだろうか。彼が別の人と一緒にいる所を想像する。そんなのは、嫌だ。
私は鞄に入れた、小瓶に手を伸ばした。ネットで調べて手に入れた、毒が入った小瓶だ。
本当に、私だけのものになってくれるの?
と、私はもう一度、聞いた。
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