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ある日の内務省のことだった。 大久保利通は木戸孝允の使者から受け取った手紙をじろりと見ていた。 〝体調が優れないため、休みます。〟 その一文だけ書かれたその手紙に顔をしかめた。 付き合って日が浅い大久保ですら、その手紙は嘘だということくらいわかっていた。 「もうこうなったら引きずり出すしかあるまい・・。」 苦い顔をしてコートを着ようとすると、ドアがノックされた。 「大久保さん、失礼します。」 「どうぞ。」 思わずじろりと見てしまったが、先日その事に対し木戸と口論になったのを思い出す。 「この件についてですが・・・。」 黒田清隆が話し終わると大久保は顔を上げた。 黒田の顔に傷ができている。 「その傷、どうしたのか?」 「ああ・・・、昨日木戸さんの家で夜食を頂いたとき、負った傷です。」 「賊でも入りましたかね?」 というか何なら入ってしまえと思いながら大久保は聞くと、 「いえ、私がどうやらさっぱり覚えていないのですが。」 黒田が言うにはこういうことだった。
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