【革命】とはなにか。知っているかしら。

1/1
前へ
/4ページ
次へ

【革命】とはなにか。知っているかしら。

「ねぇ、少しだけお話を聴いてくれない?」  冷たい鉄格子で仕切られた牢屋の中で、彼女はポツリと呟いた。 「明日の朝には死んじゃう予定の娘の、最後の話を聴いてくれない?」  彼女は鎖に雁字搦めにされて、身動きひとつ取れないようにされて、惨めったらしく地面に転がされた状態で、唯一自由に動かせる瞳だけでこちらを見ていた。  ミネルバ=ダントルトン。隣国の王女でありこの国の王子に嫁いできた次期王妃だった人。よく知らないが、噂では隣の国で蝶よ花よと育てられた、苦労を知らない齢16の王女様。そんな彼女が装飾品もドレスも剥ぎ取られ、長かった美しい髪を乱暴に切られ、下着と変わらない薄手のワンピースだけで牢屋の中に居る理由。それは圧政に苦しむ民が奮起した革命で、罪深き王族の一員として捕らえられたから。  度重なる不作、それでも上がり続ける徴税、民は今日のパンにすら苦しんでいるのに王族は贅沢な暮らしをしている。そんな不条理を正すための革命。そして革命は見事成功した。  最初に王様が殺された。次に女王様が殺された。どちらも絞首刑だった。  今日は王子が殺された。そして明日はこの娘が殺される。  疲れきった顔で、涙の跡が残った頬で、それでも優しく微笑む彼女に、同情しないわけではなかった。もう何日もまともな食事も水も与えられていないから、その声はカラカラで疲労が滲んでいた。それでも彼女は微笑んでいた。そして、最期の話を聴いてくれと牢番である俺に懇願した。 「……なんだ? 『助けてくれ』なんて言っても無駄だぞ」 「そんなつまらないこと言わないよ。きっとアナタも、興味を持つ話」  俺は仕方なく、彼女と向かい合うように地下牢の冷たい石畳に座った。彼女は「ありがとう」と笑みを深めると、「どこから話そっかなぁ」と天井を見る。その周囲でネズミが駆けずり回っていても、彼女は気にした様子は無かった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加